発刊にあたりて 和歌山木材史編集委員会委員長 堀 良造 歴史によって過去、現在、未来の推移動静を知ることが出来、その時その時代において人各々が自己の職域を通じて社会への奉仕に努めるものであります。何れの場合に於いてもその経路を辿り、次の世代の啓発資料を得て、すべての企画構想をねるのが常とします。 わが木材業界においては昭和43年5月木協定時総会に於いて和歌山木材協同組合創立20周年竝に木材会舘竣工記念事業として「和歌山木材史」を刊行することになり、直ちに編集委員会を結成して、その輝しい記録を永久に残すよう画期的な事業完遂に遇進することになったのであります。 紀州藩当時より和歌山市は木材の集散地として繁栄をきわめたのでありますが、もとより素材の生産地ではなく、従って縣市に於いても林業関係の資料はあるが流通関係のものは殆どなく、その文献資料すら戦災等によりすべて焼失、散逸して何一つ手がかりになるものがありません。 無から有に発足するのむづかしさは想像に余りあるものを感じました。先づ先輩各位から思い出話を聞く、官庁諸団体から関係資料を蒐集すると云う順序で、とり進めたのであります。 編集の企画は藩政、明治、大正、昭和、戦時統制の時代編。 吉野材、土佐材、中国、九州材、縣内材、北海道、樺太材、米材、北洋材、南洋材、台湾材の樹種編。 製材工場、貯木場、木材港の設備編。 組合組織、関連団体及び人物編、其他災害対策編。 以上の大要に基き先人の功績をたたえる気風を尊び伝える意義をも加え編集することにしました。かえりみればこの刊行は何分初めてのためこのように遅れましたが、編集の途中幾度か難関に差し当り、これが成就出来得るものかと日夜苦悩の連続でありましたが、ただ次代のためにのみと精進し、更にこれから何年か後に増改版発行に当り、いささかのお役にでも立つなれば望外のよろこびであり、尚又、業界の繁栄に寄与することを念じ終生の光栄とする次第であります。 おわりに組合員竝に委員各位には長期に亘り絶大なる御協力御援助賜わりましたことに対し心から敬意を表するとともに深く感謝して御挨拶といたします。
昭和46年11月