(十四)伐採と搬出方法
吉野は嶮山重畳し山岳大なるものあり、且つ吉野川は枝川は急流にして狭く、巨岩奇岩突出し吉野材が和歌山港に到着するまでには多くの困難を見た。当市が吉野材の集散地として発展した蔭には、嶮山に於ける伐採から初まって搬出、更らに急流の管流しなど多くの作業過程と困難を積み重ねている。
この事はひとり本市のみならず、今日の木材業の発展を基礎ずけるものとして吾人は知らなければならない。依って左に其の作業過程の一端を記述す。
伐採された木材は吉野川本流に於て筏に編成されるまで概ね次の方法をもって搬出された。
(1)釣出し
此の方法は急傾斜な林地に於て、各所で伐採し散在している木材を運材起点まで集める方法で、鉄製の〈トチクワ〉と言うものを木材の切り口に打ち込み、