工場の構造は極めて簡単にして長方形のこけ ら葺の小屋を建て其の中に器械を据付けたるものなり。機械は円形の鋸で水力若くは蒸気力により廻転す。馬力は5馬力ないし6馬力、水力を利用する工場は水車の心捧に鉄製の歯輪ありて之より第1加速輪(木製多くは松なり)に動力を移し第2加速輪にて回転速力を増加す。而かして第2加速輪より調革を鋸円板の中心より直角に出たる心捧にまとい以って鋸を回転す。鋸は水平に安置せる台の中央に在る割目より現わる。其台は木製にして覆ふに薄鉄板を以てし、巾3尺~4尺5~6尺のものなり。而て鋸を回転する鉄製心捧は此台下に直接装置するをもって鋸の台上に現わるゝ部分は鋸の半径より台の厚(2寸内外)を減じたるものなり。其鋸は回転中に起る摩擦熱を減ずる為め台下に装置したる細小管より水を注げり。又台より1間及び2間許の処に台と同高を以て被鉄製の棒を横架し挽材を水平に支持するに便せりと、記されている。
以上は本市に於ける明治時代の木挽から機械挽製材発達の情況であるが当時吾が国に於ける機械製材や生産量は次の通りである。