経済情勢と業界の動向
(1)大正時代
日露戦争後のインフレを抑制するためのデフレ政策は、大正期に入って本格化し、大正3年から4年にかけて、吾が国の経済は下降するとともに業界にも又、不況が到来し価格は暴落した。
此の頃本市では製材業を営む者は皆無で殆んどの業者が吉野材の仲介商であった。其の吉野材は(才)3銭2厘から3銭3厘と明治末期の凡そ半値に暴落した。
第1次世界大戦の勃発
そうした不況の中に、大正3年6月28日バルカン半島サラボに於ける皇太子夫妻暗殺事件はついに第1次大戦の導火線となり、この大戦は吾が国の経済に大きな影響を及ぼし、日本の商品は欧米の商品に代り中国や東南アジア市場に進出した。為に、貿易も一気に出超に転じ、日本の経済界は不況から一転して未曽有の好況をもたらすに至った。
特に此の好況は木材界に及ぼす影響は大きく大戦のため船舶が不足し米材や北洋材の輸移入が激減し、全国的に供給不足の現象を生じた。 斯様な情勢から、米材や北洋材に変って、国産材の需要が、旺盛となり価格も又、斬次値上りを見るに至った。中でも当時本市木材市場の花形的存在であった吉野材は全国的にも其の名声が高まりつゝあった為に、他の国産材よりも大巾な値上りを見るところとなり、(才)5銭から6銭と約倍額に暴騰し、吉野材仲買商は大いに利するところがあった。