(注 前記製材工場は大正初年から同末期迄につき従って此の間休廃業又は、新設等により多少の相異あるものと推測)  

(四) 製品相場と市況

明治から大正に移り変ると共に、製品相場は急速な値下りの傾向を見た。此の原因はすでにのべた通り、日露戦争後のインフレを抑制するためのデフレ政策は大正期に入り愈々本格化し大正初年から同4年頃まで深刻な不況が続いたためである。価格は杉の四分板で九銭(一枚)杉の二間角1本65銭であった。これをデフレ政策が実施された当初の明治41年頃に比較すると、いずれも3割から4割の値下りである。其後欧州大戦の勃発により、漸次上昇し戦役中の5年から6年にかけて四分板で13銭柱角が1円10銭と大巾な値上りを見るに至った。此の頃大戦のため船舶が不足し米材、北洋材の輸入が激減したために内地材製品は特に値上りを見るに至った。更に大戦終了後は、黄金の時代を迎えると共に需要が増大し、木材価格は特に上昇、大戦終了の翌9年には四分板が41銭二間角が2円53銭と大正初期の不況期に比較すると著しい暴騰を見るに至った。然し欧州大戦後の値上りも一瞬にして、翌10年より早くも不況に転じ四分板は36銭柱角は1円80銭と急落した。こうした不況が凡そ2年間続く中に大正12年9月の関東大震災緊急復興需要によって木材価格は暴騰し震災前の4分板36銭が49銭に柱角1円80銭が2円50銭といずれも3割から4割の急騰を見るに至る。

此の値上りは政府の物価抑制措置や暴利取締等によって一時的な現象に終り翌13年より年値下りの傾向を見るに至った。