設備の近代化やオートメ化は、他産業に見るが如きオートメ化の域に達せず、益々多くの労務者を必要とし、中小工場に於ても15人から20人、大工場に於ては50人から60人を使用 平均1工場当り20数人を使用、内地材当時に比較すると約3倍強の多数の労務者を必要とするに至った。ところが、此の頃より大企業や中小企業の発展は年と共に進歩 一方、本県の工場誘致施策はこれに拍車をかけ、製材工場の労務供給状態は益々逼迫するに至る。斯様な事情から各工場主は労務者を確保するために、賃金の値上げはもとより、甚だしきに至っては隣接工場間に於て労務者の引抜き競争を見るに至り、其の結果賃金は益々上昇す。斯様な現象は特に本市に著るしきものがあり、近年、当和歌山市の製材労務者の賃金が全国でも高水準にある。
尚此の間、一般企業の労働攻勢が益々盛んとなると共に業界も例外ではなく、本市の製材工場にも労働組合が結成されているものも少なくはなく、其の戦術もたくみとなり、労使関係は工場経営の最も重大な課題となっているのが最近の実情である。斯様な情勢にかんがみ、本市の木材協同組合では、昭和45年7月、組合内に労務事情研究会(代表幹事、小浪俊明氏)を設置、組合員各工場の労務事情の実態を調査し労使協調して労務事情の改善と労務者並び経営者の向上を促進しつつある。
尚、昭和34年4月最低賃金法制定により、各地方に最低賃金審議会委員制度が設けられ、労働省より本県の委員として堀良造氏(現和歌山木協副理事長)が業界より任命される。
後記は、戦後の本市製材工労務者賃金上昇の推移である。