今般和歌山木材協同組合が改組されて20周年を記念する記念誌を刊行せらるるにあたり一言お祝いの御挨拶を申し上げる機会を得ました事は私の最も欣快とするところであります。 御承知の通り、中小企業を取りまく環境は日増にきびしく、宿命的とも云うべき経営基盤の悪さに加えて、今夏以来のドルショックによる一連の不況によりダブルパンチをうけ、経済界は今や一大転換期を迎えようとしております。 このような状況を克服して経営の安泰を拓く道は、個々の弱い力を結集して大きな力となし相互扶助の実を上げる組織活動に待つ以外はないと考えられるのでありまして、協同組合活動の振興こそ中小企業発展のきめ手であると信じます。 本協同組合は昭和25年2月中小企業等協同組合法にもとづき改組せられ、和歌山市、海草郡、那賀郡を組合地区として、組合員210名で発足され、その後35年5月組合地区を和歌山市一円に改められ現在177名の会員を有し、組合会館も新らしく建築せられ現在に至ったもので、組合変遷の歴史は木材業界各企業の変動の歴史にもつながるわけでありまして、今日の隆昌は”ローマは一日にしてならず”との感慨一しおのものがあろうかと推察いたします。 こうした先駆者的精神から本組合が改組せられてはや20年余の歴史は人生で云えば成人の年にあたります。幾多先輩の偉業によって培われた本業界も前述のドルショックに加えてコストインフレの傾向や環境保全対策展開、労働力不足、資本自由化や特恵関税などの影響もあって企業間格差は増大し、企業努力への要請が益々強まっている状況でありますので今後の成年期に於ける本組合の使命がまことに重大であると申せましょう。 このような内外の変革の秋に当り「温故知新」の言葉が示すように過去の歴史を究め業績を知り新らしい考えを切り開いて行く礎として記念誌を刊行されます事はまことに時宣に適した企画であると深く感謝いたすとともに刊行にあたり御努力を払われました関係者の皆様方に対し万腔の敬意を表してお祝いの辞といたします。
昭和46年11月