尚又特別の必要により、すでにある仲買人が買受けた木材について譲り受けを希望する場合は、其の旨仲買人に依頼し、依頼を受けた仲買人は更に吉野材木会所(久保町3丁目にあり)に於て該種類につき再入札を行ない、再入札により値上りしたる価格の差額は当日木場立した仲買商人全員に平等に配当された。

  又着荷当日値入れもれの筏や、前日着荷した筏にして、値入れなき筏にたいしては、各自適宜買入れをなすことが許されたが、買入れ当日より起算して3日以内にその材種にたいし、他の仲買人より問屋に買入れ依頼ありたる時は、問屋に其の旨仲買人に申し伝へ再入札を行った。斯くの如く取引方法は仲々厳重であった。其の上筏の種類が多種多様で2重から3重中には6辺サシと称し6重ねの筏もあり為に、此の筏の検分には余程の体験とカンを必要とし儲けるのも損をするのも筏の検分のいかんにあった。

(四)問屋の口銭と決済方法

(1)問屋の口銭

問屋の口銭は3分1厘5毛(100円につき3円15銭也)にして此のうち3分は問屋の手数料、あと1厘5毛は諸掛料であった。ところが後年に至って此の口銭3分1厘5毛は安過ぎるとして問屋は3分5厘に値上げせよと荷主に要求したが、荷主は問屋の要求に応ぜず此の交渉は問屋側の失敗に終ったが、其後も再三交渉の結果、荷主側は一時金として金1,000円也を問屋仲間へ交附する事で落着した。又此の当時問屋の他仲買人にも口銭3分の定めがあり、但し此の仲買商の口銭は藩政時代の貫物目制度が円銭単位に改正せられたる時に