此の筏流しに要する道具は(竿)と唱へ杉木長さ一丈廻り5~6寸の材を手頃に削り是れにて筏 を操るを常とするも大水の時は櫂と称する(巾本6寸先き9寸厚1寸柄之の長さ2間、末口2寸位)恰かも長刀の如く作りたるものを筏の先床に枕(長3尺位口径2寸もの4本を以て作る)を置き其上に此の櫂をはめ之にて筏の鼻を自由に廻すに用う(先床の尻にタマコと唱え大綜を藤にて輪を造り脇乗りの人夫之にて竿を差し鼻の梶を取るに用う)又此の他筏乗り下しの方法に種々あるもいずれも相当の技術と経験を要したるものなり。尚酒樽、樽丸、板類等は陸路にて運送することあるも多くは此の筏に搭載するも大木の筏に積む事は稀にして中木以下の筏に積み運ぶことを常とした。

 尚、前記筏乗り区域には上み乗り、中乗り、下乗りに区分されて居り、上み乗りは(和田区より東川区まで)中乗りは(同区より飯貝区まで)下乗りは(同区より和歌山港まで)を言う。