その翌日より直ちに物資別交渉に入り、木材担当商社は8月19日頃から価格交渉を開始したのであるが、この交渉は極めて難航した。ソ連側は当初から国際市場価格を基準とし、赤字を出す輸出の必要なしとの建前をとっていたため、日本側の要求に応ぜず、交渉途上に於て日本が現在輸入している米材、カナダ材、その他日本産エゾ、トド松、カラ松などの価格等の資料の提出を求めた。
これらの資料作成について全木連も協力し説明を行なったが、ソ連側は米材との競争に価格の重点を置き、交渉は遅々と進捗を見ず難航した。かくする中に8月末ソ連代表部は商社の意向よりも、日本の需給並び価格の点につき直接消費する需要者団係の意見を聞きたい旨全木連に申し入れがあり、これに対し北洋材委員会は資料の整備と業界受け入れの決意を固め全木連の幹部と商社を同行し、ソ連代表部を訪ずれ詳細な説明を行ない現在商社が提示している価格は適正価格であることを立証すると同時にソ連側の認識と是正に努めソ連材の見本輸入を要求した。
その結果モタレツオフ代表はこれに同意し、輸入交渉も具体化するに至った。
全木連はこの会合の成果を林野庁にも報告して承認援助を求め、商社並びに全木連共同して輸入許可を通産省に要請した結果、通産省は9月8日調印5社(永和、進展、東邦、相互、大倉)を招き現金決済による100,000ドルの輸入を認めることを発表し、輸入については5社協調して行動するよう要請された。5社は協議の結果、9月16日永和グループが7,500立方メートルの輸入申請を行ない、待望のソ連材輸入契約が初めて本決りとなり、かくして昭和29年10月26日正午ソ