まれた旭橋から下流の和歌川口約220,000坪の水面に白羽の矢をたてたのであります。
われわれは此所を通る度に「好適な貯木場じゃな」と思って居りましたがこれを公言するのに諸般の事情により無理と考えていましたが、今や情勢の緊迫は厚顔を顧みずこゝに申し上げるのであります。何卆御当局の御助力と一般の御理解によりましてこれが実現を期したいことを念願いたしております。
このような事を申し上げますと何と木材業者の奴め「独善」なとお叱りを受けるかもしれません。
この地には漁業権をもち海苔の養殖をもって生活を支えている200有余の世帯をもつ和歌川漁業協同組合があります。先年漁場保護のために和歌川小雑賀附近に仮堰の設置を認めましたため其後多量の水泥が堆積しまして市の産業なり住民の衛生、災害に非常な影響を及ぼしています。
この水泥を除去するには巨額の費用が必要であります、といって其儘で仮堰を除去しますと又海苔業者との紛争は必然的な問題であります。何れにしても仮堰の施設は今や県市にとってはこの問題をめぐって重大化しております折柄、この場所の漁業権を買収することにより漁業者の生活不安がなくなり又巨額の費用をかけなくとも仮堰を切り放して自然に水泥が除去でき一挙両得の策であります。
又こゝは昔から名勝の地として、全国にも知れわたり、今も観光の地として親しまれていますから十分に注意をもって施設にあたり、観光上風致を損傷しないよう工夫し、自然の美に加えるに人工美を以って、観光的価値を高めるように考えています。
最後に災害防止の点でありますが、伊勢湾台風にて名古屋が蒙ったような災害を引起しては問題ですから、この点もよく専問家の意見を聞いて施設に格段の注意と努力を拂いたいのであります。
以上のとおり、国のとりつゝある木材についての緊急対策の速効剤として、且又和歌山市における木材産業振興策の根幹としての貯木場をこの地に施設いたしますことに、御当局の絶大な御助力と御賛同を賜らん事を切に要望申し上げる次第であります。 昭和36年9月19日
以上の要望書を作成し陳情、その後間もなく、第2室戸台風が発生其の波浪は片男波防波堤を乗り超え漁場に侵入したことや、この漁場を含む一